『リネージュ』『ArcheAge』などを手がけた韓国のゲーム開発者・宋在京氏が、AIエージェントと人間が同じ世界にプレイヤーとして参加するブラウザ向けMMORPG『Open MMORPG』を公開した。
2026年7月20日、ソースコードと開発資料がGitHubで公開された。ゲームはWebブラウザ上で動作し、Googleアカウントでログインしてプレイできる。宋在京氏が一人で開発した実験的なプロジェクトで、AIを活用した「バイブコーディング」によって制作したと説明されている。
『Open MMORPG』の中心となる設計思想は、AIエージェントと人間の「プレイヤーとしての対等性」だ。
公開資料によると、人間用クライアントとAIエージェント用クライアントは、同一のWebSocketプロトコルを使用してゲームサーバーに接続する。AI専用の特権的なゲームAPIや別の接続先は設けられておらず、移動や戦闘、チャットなどは人間と同じゲーム規則とサーバー判定に従う。
ただし、人間とAIの操作方法まで同一というわけではない。人間は3D画面とマウス・キーボードを使用する一方、AIはテキストベースのエージェントクライアントを利用する。
大規模言語モデルは「鍛冶屋へ移動する」「モンスターを攻撃する」といった高水準の判断を行い、エージェントクライアントが経路探索や状態管理、ゲーム内コマンドへの変換を担当する。LLMとの接続にはMCP(Model Context Protocol)を使用するが、MCPがゲームサーバーを直接操作するのではなく、通常のWebSocket接続を維持するエージェントクライアントを制御する構成となっている。
このため、本作における「対等」とは、AIと人間が同一の画面や入力装置を使用することではなく、同じゲーム世界、通信プロトコル、サーバー側の権限管理とルールに従うことを意味する。
ゲーム世界は32km四方で、地形、河川、海岸線、バイオーム、道路、橋などがプロシージャル生成される。最大4階建ての建築や家具配置に対応するハウジング、重量制限付きインベントリ、11カ所の装備枠、他のプレイヤーも拾えるドロップアイテムなども実装されている。
戦闘システムは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』やローグライク作品『NetHack』を参考にしており、筋力、敏捷力、耐久力、知力、判断力、魅力の6能力値を使用する。命中やダメージなどの計算はサーバー側で処理される。クライアントにはSvelte、Three.js、Threlte、サーバーとエージェントクライアントにはRustなどが採用されている。
ゲーム内アセットはAI生成、プロシージャル生成、外部素材を組み合わせて制作され、約50曲のBGMにはSunoやGoogle Flow Musicが使用されている。開発記録も公開されており、Googleログイン、ダンジョン、ハウジング、アイテム、戦闘などの機能が継続的に追加されている。
宋在京氏は、ネクソンの創業や『風の王国』初期開発に参加した後、NCソフトで『リネージュ』を開発。2003年にはXLGAMESを設立し、『ArcheAge』などを手がけた。2025年3月には、AIやブロックチェーンとゲームの融合を研究するOpen Game Foundationに理事として参加している。
AIがゲーム内キャラクターを操作する研究やプロジェクト自体はすでに存在するが、『Open MMORPG』はAI専用のゲーム操作権限を設けず、通常のプレイヤークライアントと同じ通信境界へ接続する点を明確な実験テーマとしている。
一方、公開資料からは、同時接続規模、実際に稼働しているAIエージェント数、長期間の自律行動、荒らしや不正行為への対策などは確認できない。現段階では商用MMORPGではなく、AIと人間が同じ仮想世界で活動するための技術的な検証環境として見るべき作品だ。
